日本でアフリカツメガエル大繁殖 社会と生態系の危機?

日本でアフリカツメガエル大繁殖 社会と生態系の危機?

 アフリカツメガエルが和歌山県田辺市で大繁殖している、という報道がありました。和歌山県立田辺中学・高等学校の生物部が中心となって調査をしながら、環境省、県、市などと連携して対策をしていますが、これまで数千匹を駆除しながらも生息地の拡大が続いているとのこと。吉野熊野国立公園に位置していることもあり、生態系への影響が心配されています。このアフリカツメガエルは、「生態系被害防止外来種リスト」の「総合対策外来種」に指定され、対策が必要な生物として扱われています。生態系被害防止外来種リスト、総合対策外来種とは、どのようなものなのでしょうか? その前に、まずはアフリカツメガエルについて紹介しましょう。

ユーモラスな見た目、実験動物としても

アフリカツメガエルは、アフリカ中南部原産の5~13センチ程度のカエルで、名前の通り、後ろ足の指先に黒い爪があります。オタマジャクシを卒業しても水から上がらず、一生を水中ですごします。飼育・繁殖が簡単なので、実験動物としてよく使われるほか、ユーモラスな見た目でペットとしても人気です。1匹100円程度で購入でき、気軽に飼育を楽しむことができます。

しかし、その性質が、野外に放たれたときに問題になります。低温に強く、凍らない池なら越冬できます。半年で成熟し、1度に約2000個の卵を年に数回産む上、10年を超える寿命もあり、どんどん増えていく危険性があります。泥の中で休眠できるので、魚とは違い、池から水を抜いただけでは泥の中で生き延びてしまいます。

アフリカツメガエルが日本の野外で見つかったのはこれが唯一の例ではなく、千葉県、神奈川県、静岡県などでも報告があります。ただこれらは、大掛かりな繁殖が確認されていなかったり、一時定着した後に全滅したといわれていたりします。直近では岡山県で6月13日に野外で見つかったばかりで、今後の動向が懸念されます。

和歌山県の例では、徐々に生息域が広がっています。他の例との違いが明確ではないだけに、注視する必要がありそうです。

海外でも、米国、イギリス、チリなどで定着したといわれていますが、世界的に見て長期的な定着(新しい生息地で継続的に世代交代すること)の例はあまり多くありません。

現時点では、それほど定着例が多くないアフリカツメガエルですが、国によって「総合対策外来種」に指定されています。総合対策外来種とはどんな生物なのでしょうか。どのような理由で、対策が必要な外来種のリストに入っているのでしょうか。

オオクチバスなどと同じ「総合対策外来種」に指定

「外来種」とは、もともと住んでいなかった場所に、人間によって持ち込まれた生物のことです。故意に運ばれるものも、荷物などに紛れて運び込まれてしまうものもいます。ネコやアライグマが前者、コンテナに潜んでやって来るヒアリが後者の例です。

「総合対策外来種」は、「生態系被害防止外来種リスト」のカテゴリの1つです。このリストは外来種を、定着の可能性、人や社会への危険性、生態系への影響の大きさ、対策の優先順位などについて、調査や観察に基づく根拠とともに、環境省と有識者とで整理したものです。

2010年に、生物多様性条約の締約国会議が名古屋市で開かれました。私たちの生活を支えている多様な生物と自然環境を守りながら、巧く利用していくための約束事を話し合う国際会議です。そこでは、2020年を目標に各国が取り組む項目(愛知ターゲット)が設定されています。その中で、外来種問題に実効的な対策を打つこと、そのために優先順位を明確にすることが決まりました。

これを受け、2015年に整理されたのが、「生態系被害防止外来種リスト」です。現在、動物と植物あわせて429種がリストアップされています。

リストには、大きく分けて3つのカテゴリがあります。アフリカツメガエルが入っている「総合対策外来種」は、すでに国内に定着が確認されているグループです。定着したものの駆除と拡大防止、新たな移入防止など、総合的な対策が必要な外来種が含まれます。ネコ、オオクチバス、グッピー、セイタカアワダチソウなど、多くの動植物を含むカテゴリです。他の2つのカテゴリは、キウイフルーツやニジマスなど、野外への定着を防ぎながら利用する必要がある「産業管理外来種」、定着は未確認ながら予防が必要な「定着予防外来種」(ヒアリは、2017年9月現在このカテゴリ)です。

「外来生物法」で指定された、飼育や輸入に制限や罰則がある「特定外来生物」も、定着の有無や対策の優先順位などを踏まえて、このリストの上記3つのカテゴリにそれぞれ再整理されています。

すでに名前を挙げたアライグマ、オオクチバス、ヒアリの他にも、2014年夏に相次いで発見され騒動になったセアカゴケグモや、池や川を覆い尽くすほど増えるボタンウキクサなど、人や生態系への影響の大きな生物たちです。

リストには、「国内外来種」も含まれます。例えば、ニホンイタチやタヌキなどの本土ではありふれた生物も、離島への外来種としてリストアップされています。

野外に逃げ出したらどんな問題を起こす?

冒頭で、アフリカツメガエルの飼いやすさ・増やしやすさが野外では問題になると紹介しました。逃げ出したアフリカツメガエルは、どんな問題を起こすのでしょうか。

まず、病気を運ぶ危険性です。例えば、多くの両生類にとって致命的な「カエルツボカビ」という病原体に感染しても、アフリカツメガエルは発病せず元気に生き残ります。感染した個体が移動することで、病気が広がって生態系にダメージを与えてしまう恐れがあります。

さらに、水中の「食う」「食われる」のネットワークを大きく乱すことが懸念されています。餌を丸呑みする両生類では、口の大きさが食べられる獲物の大きさを決めます。アフリカツメガエルは水中で餌を食べるので、同じ口の大きさの水棲の在来種と餌を争うかもしれません。そういう在来種がいない場所では、今まで天敵がいなかった在来種を捕食する存在になる可能性があります。アフリカツメガエルが野外でヤゴなどの水棲の動物を食べているのが確認されており、希少な生物を絶滅させることもあり得ます。

生態系への影響だけでなく、鯉の養殖場で稚魚を食べてしまうなど、経済的にも問題を起こしています。

以上のような定着の可能性、生態系や社会への影響を踏まえて、生態系被害防止外来種リストでは、アフリカツメガエルは「近年の国内への侵入や分布の拡大が注目されている等の理由により、知見の集積が必要」で、利用の際には「逸出には十分な注意を払い、放逐を厳に慎むべき」と記されています。

リスト化は「外来種対策」の第一歩

外来種問題の状況は、刻一刻と変わっていきます。愛知ターゲットで約束された「実効的な対策」のためには、優先順位の設定が極めて重要です。だからこそ、現実に即した効果的なリストとして、継続的な更新が求められます。罰則のある特定外来生物の指定を増やす必要もあるかもしれません。

アフリカツメガエルは、陸や水路によって1年に3.1~3.9キロ分散するというデータがあります。対策がうまく行かなければ、今後もどんどん広がったとしても不思議ではありません。生物が定着してから頭を抱えるより、入れないように予防する方が効率的で効果的であるように思えます。

生物を利用する人、移動させる人が責任をもって、必要以上に持ち込まない、逃がさないことがまず大切です。そのためには、情報が整理されたリストが役立つはずです。

リストには、多くの生物が掲載されています。日本原産だと勘違いされている生物や、意外な問題を起こしている生物も多く、単純な発見を求めて読んでも楽しめると思います。まずは、楽しみながらリストを眺めて、外来種問題に触れてみてください。

https://thepage.jp/detail/20171013-00000024-wordleaf

見た目はかわいらしいんだけどね(;^ω^)

コメント