お笑い番組でしつこく「笑い声」が入る深い理由とは

お笑い番組でしつこく「笑い声」が入る深いワケ

お笑い番組では、録音された笑い声が必ず入っている。
マーケティング戦略コンサルタントであり、『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』の著者でもある永井孝尚氏によると、「実はあの笑い声で、私たちは気づかないうちにコントロールされている。そういうケースは、意外と多い」と言う。そこで、私たちがどのようにコントロールされているかについて語ってもらった。(本記事は、同書の一部を再編集したものです)

■いつの間にかコントロールされている6つのワナ

テレビのお笑い番組で必ず入るのが、あの録音された笑い声である。私の周りの人たちに聞いてみたところ「あの笑い声が好き」という人は皆無だ。おそらく世の中の多くの人も、あの笑い声を好ましく思っていないだろう。

社会的証明の原理……「皆がやっていることは正しい」と思ってしまう
しかしお笑い番組では、今日も相変わらずあの録音された笑い声が流されている。日本だけではない。海外のお笑い番組も同じだ。皆が「好きでない」と思っているのに、テレビ局はなぜあの録音された笑い声を使っているのだろうか?

実は調査によると、あの笑い声のおかげで、視聴者の笑う回数と時間が増え、ネタをもっと面白く感じる効果があるという。特定の状況である行動をする人が多いほど、人はそれが正しい行動と判断してしまうのである。これは「社会的証明の原理」と呼ばれる。

この「社会的証明の原理」は、世の中ではさまざまな場面で応用されている。あるアメリカ人のセールスコンサルタントは、新人セールスマンにこう言っている。

「自分で何を買うか決められる人は5%だ。残り95%は他人のまねをしている。ロジカルに人を説得しようとしても、他人の行動には勝てない」

「この商品、売れています!」という商品広告も、この人間の性質を利用したものだ。

さらに人は自分に似た人のまねをしようとする。だから広告主は普通の人が使っていることをアピールすることで、大勢に売ろうとする。

街頭で「打ち合わせなしのインタビュー」を装い、有名人が一般人に「この商品の感想は?」と直撃インタビューするCMも、普通の人が使っているとアピールするためだ。

これらを防御するには、意図的な歪みに気づくことだ。お笑い番組の笑い声は録音だし、有名人が一般人に打ち合わせなしで街頭インタビューをするなんてありえない、と気がつけば「思考の近道」のスイッチを解除できる。

■私たちは、気づかないうちにコントロールされている

このように私たちは、自分で考えているつもりでも、実はかなり他人の影響を受けている。アメリカを代表する社会心理学者のロバート・B・チャルディーニは、世界的なロングセラーである著書『影響力の武器 第三版』で、その仕組みと対処法を紹介している。

本書ではセールスや募金勧誘業などへのリアルな潜入体験が盛りだくさんだ。だから説得力がある。アメリカを代表する教授がこんなことをやっている。考えてみたらすごいことだ。

私たちは普段の生活で「思考の近道」を使っている。つねに考え続けると疲れてしまう。だから思考を省略してもいいとき、人は簡便法を使うのだ。

私たちが商品を買うとき、品質が価格に見合うかを詳しく調べずに、「高いからいい商品なのだろう」というスイッチが入るのはその一例だ。このおかげで私たちは、日々の生活で大量の判断が必要でも対応できる。

ただ、なかにはこの思考の近道を悪用し、詐欺まがいの方法で相手にイエスと言わせる者もいる。本書は相手にイエスと言わせる戦術を心理学の原理に基づき6つに分類している。

お笑い番組で流される録音された笑い声は、この6つのうちの1つ「社会的証明の原理」だ。本書で紹介された、これ以外の5つについても簡単に紹介していこう。

返報性……「相手への借りは、必ず返すべきだ」と思ってしまう
わが家が買い物をする近所のデパ地下では、つまようじをお総菜に刺した笑顔満点の店員が、「ご試食どうぞ~」と声をかけてくる。確かにおいしいものも多い。しかし試食を一度食べたら、ほぼ買うことになる。店員と話し込んだりすると確実だ。

これが「返報性」だ。人は相手に借りをつくった状態は不快なので、返そうとするのだ。カフェで奥様同士が「ここは私が払います」と伝票を奪い合うのもこれと同じである。

最初に小さな貸しをつくれば、相手はそれ以上を返さないと気が済まなくなるのである。

この応用方法が本書で紹介されている。アムウェイの販売員極秘マニュアルだ。「顧客に『無料試供品バッグをご自宅に3日間置かせてください。試しに使ってくださいね』と伝え、3日後に試供品バッグを回収し、注文を取りなさい」というもの。信じられないほど売れるそうだ。

パーティーに押し入った強盗に、パーティー客がワインとチーズを勧めたところ、「すいません」と言って立ち去ったという。強盗も、恩義を受けたままの状態が嫌なのである。このように「返報性」は実に強力だが、防御法もある。

最初の厚意を受けたら「相手の厚意か?  販売手段か?」を見極め、判断することだ。試食品の場合、気に入った試食品でなければ手を付けないこと。ちなみに試食品をすぐ食べる私は、妻から「ダメ、絶対」と禁止されている。

■決めたことを自分では放棄しにくい心理を巧みに利用

一貫性……「決めたことは、守ろう」と思ってしまう
最初に決めたことを一貫性持ってやり続ければ、私たちはいろいろと考えずに済む。

人には「決めたことやコミットメントは守りたい」「自分の選択は正しいと思いたい」という欲求がある。集団で生きてきた人類は、このおかげで社会を発展させてきた。

一方でカルト宗教に入信した普通の人たちが常識では考えられない行動をするのも、このためともいえる。周囲が強く反対しても「自分の選択は正しい」と信じ込み、ますますハマる。「入信した最初の自分の判断は、絶対に正しい」と信じているからだ。

これをずる賢く悪用する者もいる。例えば車の販売店で、顧客に車の価格を大幅に安く提示し、まず顧客に買う決心をさせる。購入書類を何枚も記入させる。1日試乗もさせる。こうしている間に顧客は「自分はいい買い物をした」と思い込む。

そして「お客様、大変申し訳ございません。エアコンの値段を加算し忘れました」

これで最初の値引きはなくなるが、すでに買う判断をした顧客が購入を撤回することはほとんどない。これは「承諾先取り法」と呼ばれる。一度購入をコミットすると、後で悪い条件が出ても撤回しにくい。詐欺同然の手口だ。

防御方法はある。本来、一貫性はよいことだ。しかし、なかにはバカげたものもある。途中で「おかしい」と思ったら、手遅れになる前に早めに一貫性を放棄することだ。

好意……「好きな人だから、きっといい人」と思ってしまう
また、取調室で2人の刑事が容疑者を取り調べていて、1人の刑事がキレまくっている。

「やったのはおまえだ!  ブタ箱にぶち込んでやる!  最低、懲役5年だな。吐け!」

「おいおい。ちょっと手荒すぎるぞ。外で頭を冷やしてこいよ」

キレた刑事が出た後、残った刑事がコーヒーを勧めながらやさしく声をかける。

「アイツは腕利きだ。証拠はあるから5年は本当だな。実はおまえ、俺の若い頃に似ててさ。本当はおまえいいやつだよ。俺はおまえの味方だ。今、罪を認めれば減刑を口利きする」

そして容疑者が落ちる、というのは、刑事ドラマでよく見る場面だ。人は相手に好意を持つと、頼みごとを聞きやすくなる。だから容疑者が落ちるのだ。

この刑事はさらに返報性(=コーヒーをおごる)という合わせ技も駆使している。

あるセールスマンと話したときのこと。しきりに「本社が近くですね」「私の名前と一字同じですね」と似た点を言ってくる。

これも親近感を抱かせ、頼みごと(=販売)を通す作戦だ。セールスに顧客との類似性を探す訓練をする会社もあるという。刑事が「俺の若い頃に似ている」と言ったのも同じだ。

この技を防御するには、「依頼内容」と「依頼する人」を区別して考えることだ。「ほかの人がこの商品を販売しても買うか?」と考えれば、冷静な判断ができる。

■権威に従ってしまうのは人間の性質

権威……「権威がある人は、絶対に正しい」と思ってしまう
心理学者ミルグラムは「人はどの程度、他人に苦痛を与えられるのか」を実験した。

実験には2人が参加し、「教師」と「学習者」の2つの役が割り当てられた。「教師」の参加者は「学習者がクイズに間違ったら、研究者の命令に従い、電気ショックのスイッチを押すように」と指示された。電圧は徐々に強くなり、最後は気絶寸前になるほどだ(実際には、教師役以外はすべてやらせだ。気絶寸前も演技。電気も流れていない)。

ミルグラムたちは「最後までスイッチを押し続けるのは1~2%」と予想していたが、なんと3分の2の参加者が、最後まで続けたという。アメリカ以外の国も同じ結果だった。

これは参加者が残酷だからではない。教師役の参加者は「実験をやめさせてくれ」と言いながら、ボス(=命令する研究者)に反抗できずにスイッチを押し続けたのだ。人は権威者の命令には、とにかく従おうとする。権威の持つ影響力は強力だ。

この「権威に従う」という人間の性質のおかげで人類社会は発展してきたが、悪い面もある。人はそれ以上考えなくなるのだ。強制収容所の大量殺戮(さつりく)に多くの人が加担したのも、大企業で不祥事が起こるのも、この仕組みのためだと考えられる。

人は相手が権威を持つかどうかを、肩書(社長や教授など)、服装(白衣やスーツなど)、装飾品(乗っている車など)などで判断する。

映画『クヒオ大佐』で堺雅人が演じた結婚詐欺師は、「アメリカ空軍パイロットでカメハメハ大王やエリザベス女王の親類」を名乗り、軍服姿で女性をだましたという実在の人物がモデルだ。テレビCMで有名俳優が白衣を着て、商品の効果を語るのも同じだ。

われわれは権威には無防備だが、2つの質問で防御できる。

「この権威者、本当に専門家なのか?」。クヒオ大佐は、実は飛行機を操縦できない。

「この専門家、どの程度誠実なのか?」。その人にどれだけお金が入るか考えれば、ダマされる可能性は減る。

■希少性のワナから逃げるには?

希少性……「手に入りにくいものはいいものだ」と思ってしまう
私たちは「手に入りにくいものはいいもの」と考える。これは「自由」と関係がある。

入手する機会が減ると、「入手する自由」を失う。私たちは自由を失うのを嫌う。これを「心理的リアクタンス」と言う。要は「自分で決められないのはイヤ」なのである。

だからわれわれは「限定10個」と言われた瞬間にスイッチが入り、無性にほしくなる。

防御策は「希少なモノがいいとは限らない」と気づくこと。希少なものがほしいのは、使いたいからではなく、単に所有したいからだ。「限定10個」と言われたらまずは頭を冷やし「本当にこの商品がほしいのか?」と考えれば、希少性のワナから逃れられる。

時代の流れが速くなり情報も増え、判断すべき選択肢も増えているので、私たちは「思考の近道」を使わざるをえない。本書の最後でチャルディーニは、「思考の近道を使い意思決定すれば日々の生活を効率的にできるが、この仕組みを悪用する者もいる。本書の6つのポイントを理解し、そのようなインチキに対抗してほしい」と締めくくっている。

私たちビジネスパーソンは、日々の仕事でつねに交渉している。相手の攻撃パターンを理解しよりよき交渉をするうえで、本書は大いに役立つはずだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190430-00277028-toyo-bus_all

sakamobi
sakamobi

平成と共に終わって欲しい悪習😫😫😫

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