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シリコンバレーと深センを回って判明「PDCAが日本の病の原因だ」

   

シリコンバレーと深センを回って判明「PDCAが日本の病の原因だ」

「決められない人は帰ってください」

いま筆者は、シリコンバレーでこの原稿を書いている。今年2月の訪問に続いて、またやって来た。今年3月末から4月初旬にかけては、有望なスタートアップ企業が集まる「紅いシリコンバレー」と言われる中国・深圳にも出向いた。

本稿では、米国・中国の取材を通じて感じたことをお伝えしよう。

米中の最先端都市で立て続けに取材し、筆者が感じた共通項が2つある。それは「スピード」と「若さ」だ。とにかく経営の意思決定や現場での判断が素早い。それと、若い経営者と幹部社員が多い。

シリコンバレーのあるインキュベーションオフィスでは、「ゴキブリたれ!」と書かれた絵が張られていた。ゴキブリのように素早く動いて、しぶとく生きろというメッセージだ。中国の工作機械・ロボット関連の新興企業でも、社是の一つは「今やる!すぐやる!私がやる!」だった。社長は30歳の元大学教員、やり手の女性営業部長は20代後半だ。

日本企業は、このスピード感についていけず、率直に言って米国や中国ではバカにされていた。米国では、ベンチャーキャピタルの人からこんなことを言われた。

「日本の大企業はシリコンバレーによくやって来るが、1週間で投資決断できるようなことを、本社で稟議書を回して半年以上かけて決断する。この間にビジネスの環境は変わる。米国のベンチャー企業は、日本の大企業とは組みたくないというのが本音ですよ」

昨年、イスラエルの投資セミナーを取材した際にも、冒頭で講演したイスラエル人が、「最近、日本企業はイスラエルにオフィスを設立しているが、なかなかビジネスに結びつかない。その理由はすぐに決めないからだ。日本企業は、提携や投資などを最終決定するのに時間がかかり過ぎる。今日は、決められない人は帰ってください」と言っていた。

どうやら、日本企業は「決められない病」にかかっている、と世界からはみなされているようだ。その原因は何か。筆者の独断と偏見も入るが、「PDCAサイクル」へのこだわり過ぎにあるように思えてならない。

よく知られている通り、PDCAとは、P(プラン=計画)、D(ドゥ=実行)、C(チェック=確認)、A(アクション=再実行)のことだ。Aの後にS(スタンダイゼーション=標準化)が来る。P→D→C→A→Sのサイクルを繰り返すことで、標準作業の水準を高められる。日本のビジネス書でもこのPDCAに関する書籍が多く出版されており、ビジネスマンの教科書的な位置づけのものもある。

PDCAは、製造や品質管理の現場のマネジメント手法としては重要だ。「解」が分かっている仕事を着実にこなして、仕事のレベルを高めていくという意味においてだ。追いつき追い越せの時代に、高品質な製品を効率的に大量生産する時代には有効な経営テクニックだったということだろう。

昨今、国内では神戸製鋼所や三菱マテリアル系企業での品質不正問題が発覚したが、こうした企業では、PDCAサイクルを回す基本がしっかりできていないのではないかと見られる。

「D(実行)」から入ってみなはれ

しかし、時代の先行きが不透明な時代、すなわち「正しい解」が何か分からない時代にPDCAサイクルにこだわり過ぎると、物事が先に進まなくなってしまう。そもそも先が読めないのだから、その時点で緻密な計画の立てようもないからだ。

そこを日本の企業は、「Pづくり」にこだわり過ぎて、社内調整に時間を浪費しているように見えてしまう。そして、綿密に作った計画をようやく実行に移そうとしても、時代の流れが速いので、計画自体が陳腐化してしまう。

要は、先が見通せない時代には、誰かがリスクを取ってやってみるしかない。しかし日本企業では、無意味なコンプライアンス強化や成功体験への安住なども影響して、社内の基準やルールに合致しないことには挑戦しづらい風土が少なからずある。その基準やルール自体が時代遅れになっているかもしれないのに、だ。

現在は、「非連続のイノベーションの時代」とも言われる。これは端的に言えば、製品開発などの面において、過去の成功体験に安住していてはヒット商品は生まれないということである。もっと過激に言うと、「今日の勝者」があっという間に「明日の敗者」になってしまいかねないということでもある。

こうした現状の中では、平均値的なマーケティングデータが通用せず、何が売れるか分からない。売れる製品・サービスの誕生プロセスでは、共感、ストーリー性、ユニークさ、ハードとしての価値のみならず使用することで得られる社会的な意義など、複雑な要素が絡んでいる。こうした分野は事前調査で把握しづらい。

そもそも、これまでにないような新しいビジネスモデルや製品・サービスを創出する仕事に「標準(S)」はないのだから、PDCAサイクルを回しても意味がない。

まずは、やってみて(D)、確認と軌道修正(CとA)をしながら、大きな方向性が見えたところで、初めて計画(P)が立てられるのではないか。何が正解か分からない時代に、あまり理屈をこねて計画を立てても、成功するか否かは分からないのだから。

まずは小さな実行から踏み出して、軌道修正しながら状況によっては撤退の判断を素早く行い、可能性があると思えば、大きな構想を描いてさらに一歩踏み出していくという発想が重要だろう。PDCAサイクルへのこだわり過ぎは、新たなビジネス創出の阻害要因になりかねない。

では、日本人は、こうした新しいビジネスを創出することが苦手なのだろうか。筆者は決してそうではないと思う。

「やってみなはれ」。サントリーを創業した鳥井信治郎氏も、松下電器産業を興した松下幸之助も、この言葉をよく発していたという。やってみないと分からない、という意味が込められている。まさしく「D」から入っていこう、というメッセージだ。

日本からイノベーションが創発されづらくなっている要因の一つに、「やってみはなれ精神」の欠如があることも、中国や米国での取材を通じて感じた。

日本企業に「やってみはなはれ精神」を呼び戻すためには、「ベテランが若手の成長を見守る心」を大切にすることではないかと思う。これは深圳での取材で感じたことだ。

今やドローンで世界的企業に成長したDJIの20代の元社員にインタビューした際に、その人は「DJIが成長した理由は、若い人に多くの経験をさせて、前向きな失敗なら許すことだ」と語っていた。

冒頭で述べた工作機械・ロボット関連の企業も、オーナーは60代の日本人だが、「すべての仕事は若い中国人に任せて、一切口を出さない。常々、私に相談せず、自分で判断しなさいと言っている。私が会社で仕事をするのは、顧客とトラブルがあって謝りに行く時だけと決めている」と言う。その結果、2016年から17年にかけて、売上高は60%伸びたそうだ。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55957

 

もはや日本社会全体が「大企業病」に罹ってる状態なんだろうね(;´Д`)

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