光浦靖子「大久保さんより私の方が面白い。大久保はOLという肩書でハードル下がってるだけ」

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「一緒に売れる必要はない、友達のまんまでいいんじゃない?」光浦靖子(50)が語る同級生・大久保佳代子の存在

『50歳になりまして』より#1

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「コンビというものは厄介です」「私はいつも大久保さんと自分を比べてしまいます」。23本のエッセイをまとめた『50歳になりまして』(文藝春秋)の中でそう語るのはオアシズの光浦靖子さん(50)。

相方・大久保佳代子さんとは小学1年生からの付き合いであり、元々は仲良しで始めたオアシズ。「幼なじみ」と「仕事のパートナー」の間で揺れ動く二人の関係性の中で、「一緒に売れる必要はない、友達のまんまでいいんじゃない?」と気づいたという光浦さん。来年30周年を迎えるオアシズの二人の関係はどのように変わっていったのかーー。光浦さんによる同書から一部抜粋し、『私が作って私がときめく自家発電ブローチ集』(文藝春秋)の作品とともに紹介する。

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「50歳になりまして」―― コンビ
来年2022年、私たちオアシズがデビュー30周年なんですって。黒沢と電話してて知りました。「靖子さん、来年の30周年はイベントするんですか?」「はい?」

すっかり忘れていたというか、意識したことなかったです。私たちは1992年の8月の終わりに人力舎のネタ見せに行き、そこをデビューとされています。ネタ見せは誰でも受けられるわけで、それをデビューとしたらいけないんじゃないかなぁ。本人が納得できなくても知らない誰かが作ってるウィキペディアの方が真実になってゆきますからね。一度、仕事でウィキペディアを見ることがあって、その時そこには、元々「オアCズ」というコンビ名で、お笑いに誘ったのがブッチャーブラザーズさんで、大久保さんがOLになった、とありました。全部近い。非常に近いがちょっと違う。

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オアCズというコンビ名は、飲み屋で挙がっただけの名前で、一度も使っていません。ただ誰がこれを載せたのか。相当詳しい人です。ブッチャーブラザーズさんは、初めて行ったネタ見せの審査員であり、そのライブの主催者であり、当時人力舎に所属していたお笑いコンビであり、吉本以外の東京のお笑い芸人さん(40代前後)は、みーんなお世話になっています。大久保さんが芸人を辞め一度OLになった、これはよく勘違いされるのですが、大久保さんは芸人?を辞めたことは一度もなく、ずーっと続けていました。オアシズで単独ライブをやったり、営業に行ったり、たまにラジオやテレビに出たりしていました。ただ、世間が知らなかっただけで。初のレギュラー番組「とぶくすり」に私だけが出たので、テレビの人さえも私をピン芸人だと思ったようで、コンビにはあんまり仕事が来なくて(全くのゼロではないんですよ)大久保さんはバイトがメインになっていった、という次第です。生計を立てているものが職業となるならば、OLです。

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「私はタレントだけど、大久保さんは?」
普通の芸人さんの普通のプライドなら、いくら週6でバイトをしていようが、ひと月に1回しか舞台に立っていなかろうが、自分のことを芸人と言います。でも大久保さんは、というか、そもそも私たちはネタをコンスタントに作っておらず、ライブもファンだけを集めた単独ライブというぬるい環境でしかやらず、ネタから逃げている罪悪感があり、私は女というだけで、ブサイクというだけですぐにテレビに出られたという自覚もあり、胸を張って自らを芸人と名乗ることができませんでした。だから、私は自分のことを「タレント」と呼んでいます。芸をしてないから芸人とは言えないけど、タレント(才能)とは言えるって……そっちの方がおこがましいか?

「私はタレントだけど、大久保さんは?」「うーん……何かなぁ」「OLさんじゃね?」

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大久保さんを「OLさん」と呼んだら、怒って、奮起して、本気出すかと思ったら、むしろ自ら「OL」と名乗るようになりました。大久保さんの口から「頑張ろうよ」という言葉は43年の付き合いになりますが、まだ一度も聞いたことがありません。頑張ろうよ、と煩く言いすぎた私を大久保さんは煙たがっていました。万策尽きたと思いました。

しかし、万策なんか尽きてなく、むしろ私のこしらえてきた策が全部要らなかったようです。自らをOLと名乗ることで、歯車はうまく回り出したのです。世間からのウケが良くなったのです。単独ライブでもOLネタをやったりすると「説得力があって面白い」となり、初めて見る人は「OLにしては面白い」となってゆきました。OLとなった途端に、求められるモノが変わっていったのです。

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大久保さんは芝居が下手ではないですが、上手いわけでもありません。大久保さんはどんな無理な役でも綺麗にこぢんまり、70点に収めるのです。「出オチかよぉ」というわかりやすい笑いにはならないです。あまりに当たり前の顔をしているのでつい見逃しそうになる、万引き常習犯のふてぶてしさがあるのです。これが最大の魅力です。だからコントを作るときは、いつも大久保さんに何着せようかな、何やったら見てる人が「腹たつー」と言ってくれるかな、から考えていました。学園一の人気者の美少女、町工場で肉体労働する男、バブル期の水着のキャンペーンレディ、裸の先生、猫に変身する美少女……。大久保さんにはプロがたまに見せるいやらしさが全くないのです。淡々とこなします。キャリアが浅いのにベテラン感。どっか他人事感。それが地味にずーっとクスクス面白いんです。ここに「OL」という肩書きが金棒になったのでした。

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「めちゃイケ」でバカウケした大久保さん
「めちゃイケ」のスタッフが私たちの単独ライブを見て、大久保って面白かったんだ、となり、「めちゃイケ」に隠しゲストで出ることとなりました。バカウケでした。時代の幕開けでした。

嬉しかったです。眠れる獅子がやっと起きたぜ。この人、うちの学年で一番面白かったんですから。もう一人じゃないんだ。もう怖くなくなる。

初めは嬉しかったのですが、すぐに辛くなっていきました。何も、思い描いたようには運びませんでした。大久保さんは「OL」という肩書き、扱いなので、スタッフも共演者も、私に要求するものと大久保さんに要求するものが違いました。そして大久保さんはまだ未知の存在で飽きていない。大久保は面白いけど光浦はつまらない、そうなってゆきました。あれ? あれれれ? いや、いや、そういうことじゃなくて。一刻も早く、この空気打破しないと……。私だって、いや、私の方が面白いはずです。私は焦って空回りばかりするようになりました。カラカラカラカラ…………。

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ネットニュースなどに大久保さんが取り上げられるたびに比べられました。そこにはいつも「逆転」という文字が。ウサギとカメのカメが大久保さんなんでしょうか。何が腹たつって、世間の正義は勝つという空気でした。大久保は今までOLで苦労してきたから。テレビに出ないことは苦労なんですかね。ここまでの環境を作るのに、どれだけの苦労をしたことか。

なぜ世間は比べることが好きなのでしょう。自分の意見だけじゃ心もとないから、差で補強しようとするのでしょうか。大久保すごい、それでいいじゃんね。光浦落ち目、これを加えることで、少しでも問題を大きくしようとする人たちの意地悪さに泣かされました。

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「仕事のパートナーにはなれませんでした」
コンビというものは厄介です。どちらかがボケになればどちらかがツッコミになるように、二人で一つになるもので、趣味も好みもキャラクターも、体質ですら自然と住み分けるようになります。片方に唾をつけられたら片方はもう手をつけられなくなります。大久保さんは男好きで、私はお堅くて、大久保さんが下ネタを言えば、私は「ぎゃー」と耳を塞ぐ。いや、別に、コンビ揃って男好きでもいいんですよ。でも自然と同じ熱量で逆の方向へ進んでゆくんです。後輩芸人のツッコミと私が仲が良ければ、ボケは大久保さんと仲がいい。私がすぐ泣くのに、大久保さんは人前で泣かない。私は寒がりで大久保さんは暑がりで、私は汗っかきで、大久保さんは汗をかかない。私はたい焼きの皮が好きで、大久保さんは餡子が好き。お金のない若手の頃は上手に分けて食べていました。

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私たちは小学校1年生からの付き合いなので、地元は共通の友達ばかりです。盆暮れ正月、せっかく田舎に帰ったのに飲み会で顔を合わすと、正直、うんざりします。でも、「大久保さんがいるなら行かない」「光浦さんがいるなら行かない」こういうことをすると、刺激の少ない田舎暮らしに降って湧いたゴシップ、楽しいイベントの一つにされかねないので言いません。「なんだよ、いるのかよ」私と大久保さんが誰にも気づかれずに一瞬、光の速さで目と目で会話します。こういう時、コンビだなと思います。

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私たちは結局、仕事のパートナーにはなれませんでした。元々、仲良しで始めたこと。お笑い好きな大久保さんと会う口実が欲しくて、媚びるようにお笑いサークルに入らない?と誘ったのが大元のきっかけです。私が先に売れ、大久保さんが後に売れ、足並みが揃ったことがなくて、揃えようとするとなんだか互いが疎ましくなって、どちらからともなく気づいたんです。一緒に売れる必要はない、と。友達のまんまでいいんじゃない?と。たまーに、コンビでゲストに出ると楽しかったりします。

人と比べていいことなど一つもありません。あれだけ世間に比べられて落ち込んだのに、でも私はいつも大久保さんと自分を比べてしまいます。ここは勝ってる。ここは負けてる。こんなに真面目に生きてきた私が負けるはずがない。でも悔しいかな認めたくないけど、大久保さんは私より、人から好かれます。それは子供の頃からです。

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「私にはとっつきにくい空気があるようです」
私にはとっつきにくい空気があるようです。仲良くなった人にいつも言われます。私がもっとも嫌いなことは冤罪です。自分が間違ったことを言って非難されることは全然平気です。でも間違って伝わることは、ほんの些細なことでも許せません。身長を2センチ間違ってプロフィールに載せられたことを知り、気になって、夜中に急に目が覚めて眠れなくなってしまったこともあります。自分でもおかしいと思っています。ある人は私に言いました。「なんか否定されそうなんだよね」。それは、否定じゃないんだよ。私がしてるのは訂正なんだよ。「ほら、否定された」……頭にくる奴だなぁ。

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大久保さんは、受け入れるんですよね。それが間違いでも、なんでも一回は受け入れるんです。一度、なんでそんなに受け入れられるんだ?と聞いたら、「『違う、違う』といちいち訂正する方がパワーがいるじゃん。しかも、訂正するほどのことでもないじゃん」と言いました。

……そうだよね。訂正するほどのことじゃないんだよね。世の中、そんなことばかりだよね。

「本当は〇〇なんでしょ?」

「今、〇〇って思ったでしょ?」

「違う。違うよ。あ、でもちょっとそうかも?」

「アハハハハハハ」

そういう受け止め方でいいじゃんね。なんでか知らん。そんなことができないじゃんね。

「ちゃうわ! ちゃうわ! ちょっとそうかも?」

「そやな。そやな。なんでやねん!」

笑いの基本のリズムじゃんね。受け入れは必ず必要じゃんね。

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先日、コンビでテレビの収録でした。空き時間、隣に座ってた男性タレントさんが大久保さんに話しかけていました。彼はとても気遣いの人で、私も大好きな人です。でも私は、彼が気を使って話しかけてくれる時の、理性と優しさの顔しか知らなかったので、こんないたずらっ子のような顔をするんだ、とちょっと驚きました。カメラが止まるたびに彼は大久保さんに話しかけますが、大久保さんから話しかけることは一切なく、いつもの低いテンションで返事をするだけです。でも彼は、とても楽しそうでした。

私はこういう人になりたかった。OLを受け入れた時から私は完敗だったんだな。

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いや、待て、待て。これも自然と反発するコンビの呪縛じゃないのか? 大久保さんがなんでも受け入れるから、私は受け入れられない人間になってしまったんじゃないか? そう考えると、なんでもかんでも先に唾をつけた大久保さんが悪い、と結論づけられないか?

30周年は、大久保さんが何か提案してきたら引き受けてやってもいいです。お土産はもらって困るスノードームに決めてあります。

https://bunshun.jp/articles/-/45616

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sakamobi
sakamobi

光浦が大久保さんに勝てる要素ないでしょ😅😅😅

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