FX・仮想通貨にハマり借金も…1900万円負けた37歳の「マイルド貧困」

 格差や貧困問題の是正が放置されているうちに、「アンダークラス(パート主婦を除く非正規労働者)」が900万人を突破、日本は「階級社会」への道を突き進んでいる。中でも「中間階級」が崩壊、新たな貧困層が生まれてきた。それは、どん底一歩手前の「マイルド貧困」とも呼べる新たな階級だ。そこでDOL特集「『マイルド貧困』の絶望」第7回は、借金をしてまで投資にのめり込み、1900万円以上も負けている30代の男性を追った。(ライター 横山 薫)

● 社会人になってすぐに始めた株 2700万円まで増やした成功体験

IT企業で働く高橋慶介さん(仮名・37歳・既婚)は、親が所有する都内マンションに妻と住む共働き世帯だ。年収は470万円と、中小企業で働く大卒の平均年収程度はもらっている。また、妻も派遣社員として働いている上、家賃がかからないため、むしろ生活には余裕がある。

にもかかわらず、高橋さん世帯は貯蓄ができず、子どもを産むこともできない。その理由は、高橋さんの「借金体質」と「ギャンブル体質」にある。

 「大学を卒業して正社員としてIT企業に就職しました。社会人になってから親のマンションに住んでいて、当時は親にも家賃として多少払っていましたが、生活費がきついときは払っていなかったり。おかげで、好きなことにお金を使う余裕がありました。それで始めたのが、株式投資だったんです。僕はこれまで2回転職しているのですが、300万円→400万円→450万円以上と年収アップにつながる転職ができたのも、投資する資金が確保できた理由ですね」

高橋さんが株を始めたのは2003年ごろ。当時は、足利銀行が経営破綻したり、りそな銀行に公的資金が注入され実質国有化されたりと、金融不安が高まっていた時期だ。

「4月には『ソニーショック』も重なり、日経平均株価はバブル崩壊後の最安値を記録するなど、ニュースや新聞でも盛んに報じられていました。今思えば安く買えるから始める時期としてはよかったわけですが、当時はそこまで考えていなくて、社会人になったら株をやってみたいと始めました。その後、2006年のライブドアショックまで順調に増やすことができました」

今では当たり前となったネットによる株式投資だが、そのころはネット証券がようやく出そろい、デイトレーダーが誕生した時期でもある。高橋さんもこの“ブーム”に乗って、一時は2700万円ほどまで資産を増やしたという。

「ただ、ライブドアショックの直撃を食らって…。一気に資産が減ってしまいました。そのころからFXブームが起きて、変動の大きいポンドや、スワップ金利(1日ごとにもらえる金利のようなもの)が高い豪ドルなどを、レバレッジ50倍、100倍といったフルレバレッジでやっていましたね。もちろん、生活費などを引いて余った給料は全額投資につぎ込んでいました」

● FXのレバレッジ引き下げから 借金に手を出す

しかし、相場は甘くない。2008~2009年にはサブプライムショックにリーマンショックと立て続けに世界的な金融危機が起きた。日本では民主党政権が誕生、歴史的な超円高時代に突入した。2012年末に始まるアベノミクスまでは、“投資家受難の時代”であったと言ってもいい。

「投資の勉強を大してしていない僕では勝てるわけがなく、損してばかり。給料をFXにつぎ込んでは、全額負けての繰り返しでした。ただ、2700万円まで株で増やした経験があったから、『自分には投資の才能がある!』と思い込んでしまって…」

アベノミクス相場で多少盛り返したものの、この5年はまた負けてばかりだとか。

「FXのレバレッジが25倍に下げられたことで、給料だけでは投資資金が少なくなってしまって、ついに借金に手を出してしまったんです。最初に借りたのは5年前の32歳のとき。みずほ銀行カードローンで150万円、三井住友銀行カードローンで100万円、クレジットカードのキャッシングで50万円×4~5社。プロミスやアコムなどの消費者金融からも借りていて、最大で650万円ほどでした」

こうなると借金の返済額も大きくなり、給料を返済に充てるしかなくなる。

「実は常に借金しているのではなく、投資で儲かったときや給料の一部を返済に充てて、全額返し終わったりもするんですよ。ただ、完済するとまた新たに借りることができるわけで。ちゃんと返しているのが評価されて、優良顧客とみなされているんでしょうか(笑)」

● 8月のトルコリラの急落に 巻き込まれて全額ロスカット

借金しては返済して、また新たに借金しては返済。そんな最中に、高橋さんは「トルコリラ」に出合ってしまった。

「FX会社がトルコリラを推すようになって。2014年ころからはトルコリラや南アフリカランドの高金利新興国通貨を買うようになりました。でも、考え方によっては借金してでも投資をしたほうがいいと思ったんですよ。借金の金利は年15%程度。対して、新興国通貨のスワップ金利は年8~10%程度だったと思います。でも、レバレッジを利かせて5倍で投資すればスワップ金利は年40~50%になるわけですから、借金してでも投資したほうがお得ですよね」

ところが、想定外のことが起こった。金利面だけを見れば確かにそうかもしれないが、トルコリラは「リラ安」が続き、含み損がどんどん膨らんでいったのだ。

「トルコリラを初めて買ったのは1リラ=50円前後くらいだったと思います。高いスワップ金利がもらえるので、だいたい年間3~5円程度は下がっても、その下落分をカバーできると思っていた。ところが、それ以上にリラ安が進行してしまいました」

今年8月、トルコリラが急落したことは記憶に新しいだろう。8月9日、1リラ=20円だったものが、13日は16円割れまで、数日で20%以上も急落したのだ。

「実は僕もその急落に巻き込まれて、13日に16円514銭で全額損切りされました。ほぼ底値での損切りで、非常に悔しいです。この4年で1リラ=50円から16円まで3分の1以下になっているんですからね。『レバレッジは3倍程度なら安全』とよくいわれますが、価格が3分の1になってしまっては、安全運用でも資産の9割は失っている計算になります。トルコリラなんて投資しなければよかったですよ」

こちらが、高橋さんの取引履歴だ。8月11~14日に16~17円台で次々と強制ロスカットをされているのが分かる。

「これまでのFXの負けを調べると、よく使っている1社だけでも1900万円ですね。ということは、FXをやってなければ1900万円は手元に残っていたってことですよね」

社交的で楽観的な高橋さんの顔から笑顔が消えた。

● 親のお金で仮想通貨に投資 借金の総額は1000万円近くに

FXの負けだけではない。ギャンブル体質の高橋さんは、仮想通貨ブームにも手を出していた。

「仮想通貨の“爆上げ”には興味があったのですが、FXの損失でお金がなかった。そんなとき、親から300万円を借りることができて、仮想通貨に投資する資金ができた。ようやく入金してビットコインやイーサリアム、リップルを買えたのは今年1月中旬でした。いわゆる“出川組”と呼ばれる中でも最後発。すでにピークは過ぎていて、値下がりする一方でした。結局、そのまま含み益を見ることはほとんどなく、損切り損切りの連続で、250万円ほど失ってしまいましたね」

仮想通貨で250万円の損失、そしてトルコリラで強制ロスカットになった高橋さんだが、これらの資金も借金。現在、借金はみずほ銀行カードローンから270万円、クレジットカードのキャッシングが100万円、クレジットカードのリボ払いが150万円など、その他も合わせると優に500万円は超え、合計で1000万円近くあるという。

「正直、いくら損して、いくら借金があるのかあまり分かっていません。取引履歴で1900万円の負けを現実に見ても、どうも実感がないんですよね。ただ、以前より投資意欲は下がっていますね。もう心が折れました」

マイルド貧困」は、通常の「貧困」とは異なる。日々の生活に困窮するほどではなく、趣味などの好きなことにお金を使う余裕もある。しかし、上の階級へはい上がることはできず、将来に希望が持てなかったり、結婚や出産・子育てをあきらめなければいけない新たな階級のことだ。

借金してまで投資をする高橋さん自身にも問題は大いにあるが、高橋さんのように借金や投資の失敗が原因でマイルド貧困に陥る“ワナ”が、今の日本には張り巡らされている。

例えば「消費者金融系」の借金には、「総量規制」が実施され、原則として年収の3分の1までしか借りることができない。しかし、「銀行系カードローン」は総量規制外であり、年収によらずお金を借りることができてしまう。

また、高金利新興国通貨にしても仮想通貨にしても、過剰な喧伝、投資初心者が投資で失敗する事例は後を絶たない。マネーリテラシーを高めなくては“落とし穴”にハマってしまうリスクは誰にでも起こりうるのだ。

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仮想通貨の暴落で日本の若者にも大量の「マイルド貧困層」が生まれたらしい。恐ろしい話やな(;´Д`)

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