老親の運転止めなかったばっかりに。老車カスの事故で子に突然のしかかる大借金。億超えるケースも

1億円超の賠償金も…高齢者の暴走事故が家族を一瞬でボロボロにする

高齢者が起こす交通事故は、決して本人だけの問題ではない。多額な賠償金は、家族にものしかかる。子どもには関係ないと思っていても、監督責任を問われて法廷に立つ可能性だってあるのだ。

運転を止めなかった責任
「ただでさえカツカツの生活をしていたのに、突然680万円もの借金を背負うなんて想像もできませんでした。いまでも、あの日に父の運転を止めなかったことを後悔してやみません……」

なんとか声を振り絞って話すのは、関西地方に住む玉井貴文さん(52歳・仮名)だ。

玉井さんと同居する父親・雄一さん(83歳・仮名)は’10年に近隣の酒屋に車で突っ込んだ。これにより、店内にいた跡継ぎの男性(30代)に全治3ヵ月のケガをさせてしまう。

「裁判所は、父には認知症の症状があったとして、『責任能力はない』と認定しましたが、先方から私と妻に賠償責任と慰謝料を求める訴えが出されたのです。

結果、800万円で和解となりました。保険が120万円おりたので、残りの680万円を分割で支払い続ける生活を送っています」

こう振り返る玉井さんは、事故を起こした車種を街中で見ると陰鬱な気持ちになるという。

「いまは、郊外の手狭なアパートで妻と二人暮らしです。父の認知症がさらに重くなったので、格安の老人ホームに入居させました。

いまはアルバイト代と父の年金で生活をつないでいますが、賠償金を支払うだけで精一杯で、食事はカップラーメンが中心です。すでに自分の老後が心配でなりません」(玉井さん)

交通事故によって、被害者が加害者を訴えるケースは一般的だが、実は加害者の家族まで賠償金を請求されるケースは少なくない。

’92年5月、神奈川県横浜市で、男性が雨で見通しの悪いなか車のスピードを出し、美容室に突っ込んで全壊させてしまった。裁判では、建物修理代や美容室の器具代、休業期間3ヵ月分の営業損害を含めて約1650万円の賠償金が認められた。

このとき、事故を起こした車の所有者である運転手の父親も、息子とともに賠償責任を負わされている。かつて、子どもが事故を起こしたことがあるのを知りながら、制止しなかったのだ(’94年横浜地裁)。

これは、親と子が逆でも同じことだ。

親が事故を起こしてしまって、子であるあなたに監督責任が認められた場合、代わりに賠償金を支払う事態は十分ありえるのだ。

死亡事故の場合は、その額が1億円を超えることもある。亡くなったことにより得られなくなった収入や遺族への慰謝料が、先方から請求される。

「被害者が20代だと、定年までの算定で賠償金が3億円ほどになるケースもあります」(保険評論家の長尾義弘氏)

親子2代で償い続ける
実際、裁判となると、あらゆる角度から賠償金を要求される。前述した、横浜で起きた美容室の事故も、その対象は休業中に発生した3ヵ月分の従業員の給料(451万円)や、弁護士費用(174万円)など多岐にわたる。

高額の賠償金の支払い命令が出てしまえば、保険に入っていてもカバーできない。しかし、加害者家族に支払い能力がなくても強制的に財産を持っていくのが、日本の民事裁判の「強制執行」、すなわち、差し押さえである。

まず、裁判所から執行官がやってくる。自家用車があれば「差し押さえ物件」と書かれた札を貼ってタイヤにロックをかけ、自宅にある家財などの財産も引き上げられ競売にかけられてしまう。場合によっては、一家まるごと「事故破産」する可能性もあるのだ。

たとえ家族に賠償責任が及ばず、同居する老親のみに多額の賠償金を払う必要があっても、非情な現実が待っている。

子どもは、法律的には「私は関係ない」と言える。しかし、現実はそうならない。資金力がない老親に、1億円以上の賠償請求がされれば、親が払えなくても監督責任を認めさせようと被害者から再び訴えられることもあるからだ。

つまり、身内が事故を起こしてしまえば、無傷で済むことはありえない。加害者家族として、被害者に償い続けなければならないことになる。

自動車事故ではないが、’07年12月に愛知県に住む重度の認知症患者が起こした事故は有名だ。

徘徊していた当時91歳の男性が、JR東海道線の駅で線路内に入り、快速列車にはねられて死亡した。JR東海は、男性の遺族に対し振り替え輸送などに伴う損害賠償を求めた。

男性には’00年から認知症の症状が出始め、当時は85歳で要介護認定を受けた妻と、彼の長男の妻が介護に当たっていた。長男の妻が自宅玄関先で男性の排尿の後始末をして、男性の妻がウトウトしている間に裏口から出かけてしまう。

状況的に、男性を止めるのは極めて困難であることがわかるが、’14年の名古屋高裁は無情な判決を下す。男性の妻に監督責任を認め、約360万円の支払いを求めたのである(最高裁はJR東海の請求を棄却)。

では、どういう基準で家族に事故の責任が問われるのか。高齢者が免許証を持っているということは、認知機能の面では基準をクリアしていることを意味する。しかし、裁判所の基準は免許センターのテストとは違う。

交通事故を専門に扱う弁護士法人サリュの平岡将人代表が解説する。

「基準は二つあります。一つは『その人(加害者)が、誰かに危害を加える可能性があると具体的に予想しえたこと』。

もう一つは『危害を防止するやり方があって、それを常識的に期待できるのに防止策を講じていなかったこと』です。この二つを満たせば、家族が責任を問われます」

たとえば、危ない運転をしているのに、車を使う老親を止めなければ家族の監督責任になってしまう。カギを隠すこともできたと責められても、仕方がない。

自賠責では不十分すぎる
結局、加害者の家族であれば誰でも責任を問われる可能性があるのだ。

保険ではカバーできないものがあると前述したが、そもそも自動車保険には2種類ある。

まず、すべての車の保有者に加入が義務付けられている自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)を見てみよう。

これは、被害者保護の立場から国が定めた保険として知られている。そのため、無免許運転や飲酒運転など明らかに加害者に非がある場合でも、被害者に保険金は出る。

ところが、事故によっては自賠責だけではまったくカバーできないケースが出てくる。ファイナンシャルプランナーの藤井泰輔氏はこう話す。

「自賠責は対人補償に限られます。対物事故に対してはまったく対応していません。

しかも、死亡損害3000万円、後遺障害損害4000万円、傷害損害120万円を超える対人の事故は補償されない。賠償請求が限度額を超えれば、超過分を自分で負担しなければならないのです」

歩行者をひき殺してしまい6000万円の賠償金が認められた場合、3000万円は自腹で支払わなければならないのだ。さらに、コンビニに突っ込んだ、電車を止めてしまったときなどに発生する膨大な営業損害だと、自賠責では補償できない。

「自賠責の補償では足りなければ、加害者の家族に請求する被害者は多いです。上限の決まった保険金では納得せず『人生の補償をしろ』と裁判所に訴えるのです」(前出・平岡氏)

もう一つが任意保険だ。「ソニー損害保険」や「セゾン自動車火災保険」などの任意保険は、事故にかかわる損害賠償をほとんどカバーしてくれる。

80代の平均年間保険料は約10万~20万円だ。高齢者は事故率が高いことや、免許返納を促す意味で保険額が割高になってしまうが、対人でも対物でも無制限に保険金はおりる。運転するなら絶対に加入するべきだ。

損害保険料率算出機構によると、任意保険に入っている車両は全体の約75%。4台に1台は未加入だから油断はできない。家族は老親が入っているか確認したほうがいい。ただし、万能に見える任意保険でも補償されないケースはある。

「ドライバーに故意がある事故や、身内に対する損害賠償は、補償の対象外です。免許を返納した後の運転や、飲酒運転で事故を起こしても、自分自身には保険金は一切おりません」(前出・藤井氏)

さらに、最近注目を集めているのが「個人賠償責任保険(個賠責)」だ。

これは、身内が他人の「身体」と「所有物」に損害を与えた場合に対応できる。しかし、この保険にも穴はある。自転車事故は大丈夫なのに、自動車事故には適用されないのだ。老親が自動車で他人を傷つけても保険金は一切おりない。

つまり、事故に伴う「トラブル」を保険会社がすべて解決してくれるとは限らない。むしろ、保険に入っていたことが原因で被害者との間に余計な問題を抱えることもある。

死んでも許されない
交通事故を起こしたとき、たいてい表に立つのは保険会社だ。だが、被害者側と示談が上手くいかない場合も少なくない。というのも、保険会社はできるだけ保険金を支払いたくないからだ。

そのため、被害者の要求に対して「事故に関係がない」と突っぱねて、相手の感情を逆撫でしてしまうことがある。

「自分がこんなに苦しんでいることを加害者家族は理解しているのかと感じる被害者は多いです。そんなとき、裁判で加害者家族を法廷に立たせて罪をわからせようとする。

和解する代わりに加害者側を証人尋問に呼び出して目の前で謝らせるということもありえます」(前出・平岡氏)

家族が、自分の事故が原因で、裁判所に呼ばれ、被害者やその家族から責められるのだ。

家族に対して申し訳ない気持ちから、それを苦に加害者が自殺したケースもある。

四国に住んでいた当時73歳の男性が車で自宅に帰る途中、赤信号を見落とし、自転車に乗っていた近所の男子高校生(当時16歳)をはねて死亡させてしまった。

男性は妻と遺族の家に謝罪に行ったが、怒りに我を忘れた高校生の父親が「息子を返せ!」と一喝、まったく取り合ってもらえなかった。

それだけではない。「人殺しの家」と書かれたビラを自宅の外壁に貼られたり、石を投げ込まれたりする日々が続いた。

そして、ついには裁判の途中に、自責の念に堪えられなくなって自殺してしまったのだ。

残酷なようだが、たとえ加害者が命で償おうとしても、それは許されない。これは被害者と同時に、事故で老親が亡くなってしまった場合でも同様だ。賠償責任が認められた加害者が亡くなった場合、相続人の家族が代わりに負うことになる。

「資金力がない老親に1億円以上の賠償義務が課され、そのあと相続が発生すると、相続放棄しない限り賠償義務も相続されることになります」(弁護士・外岡潤氏)

つまり、相続放棄をすれば済む話だが、そうは問屋がおろさない。

「相続放棄のルールとして、債務だけ放棄するわけにはいきません。不動産や預貯金などの大事な資産があっても、すべて手放さなければならないのです」(前出・長尾氏)

老親からしてみれば、自らが起こした事故で、我が子はおろか孫に残す財産すら失わせてしまう。

結局のところ、老親が交通事故を起こしたら、その家族もトラブルから逃れられない。

高齢ドライバーも、運転する老親を持つ子どもも、たった一つの事故があなたや家族の運命を狂わせることを知っておいたほうがいい。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190801-00066047-gendaibiz-life&p=1

sakamobi
sakamobi

任意保険にしっかり入っとけよって話しやね😟😟😟

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