【驚愕】関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?ナイツ 塙宣之が暴露

 今年も8月1日から、いよいよお笑い界の最大の祭典「M-1グランプリ」の予選が始まった。M-1の13回の歴史の中で、関西出身以外の芸人が優勝したのは、04年のアンタッチャブル(関東出身)、07年のサンドウィッチマン(東北出身)、09年のパンクブーブー(九州出身)の3例だけ。そこで関東芸人の聖地・浅草を本拠地にし、漫才協会の副会長を務めるナイツの塙宣之に、「関東芸人M-1必勝法」を探ってもらった。インターネットで調べた様々な知識を披露するも、どれも微妙に間違っている塙に土屋がツッコむ「ヤホー漫才」で一躍有名になったナイツは、M-1が始まった年、01年にコンビを結成し、以降、M-1に出場し続けた。そして3度、決勝の舞台に立ち、08年には最終決戦にも進んだ。優勝こそ無いものの、芸歴をM-1とともに歩んだ彼らは、「浅草の星」にして、まさに「裏・M-1の申し子」とでも呼ぶべき芸人でもある。

大阪はブラジル
──単刀直入におうかがいしますが、どうしたら関東芸人はM-1で勝てるのでしょうか。

塙 いきなり全否定みたいなところから入りますけど、そもそもですね、M-1は吉本興業がお金を出して、自分のところのタレントを売り出すために作ってくれた階段なんですよ。本来、吉本の芸人だけでやってもいいのに、その階段を、わけのわからない吉本以外の芸人が上がれることだけでも感謝しなきゃいけないと思うんです。その上、僕らやオードリーなんかは、M-1のお陰で芸人として食っていけるようになったところもある。十分じゃないですか。カミナリも、もういいだろうって。決勝まで行けて、飯を食えてるんだから。優勝しようなんて図々しいですよ。何を考えてんだ、って言いたい。もうひとつ最初に言わせてもらうと、僕らがM-1で優勝していたら何を言ってもカッコいいですけど、そうじゃないわけですから。おまえが何を言ってんだ、と。そういう話ですよ。

──はぁ……。

塙 まあ、そう言ってしまうと企画が成立しないので、まずは、関西という土地がどれほどの「お笑い王国」であるかという話から始めましょうか。

──よろしくお願いします!

塙 サッカーでいえば、大阪はブラジルなんです。ブラジル人が物心ついたときからサッカーボールを蹴ってるのと同じように、大阪人も物心ついたときから漫才の練習をしている。大阪人の日常会話が漫才の起源のようなもんですからね。小学生の会話なんて、そのまんま漫才のネタになりますよ。あと、この前、あるラジオで紹介されてたんですけど、世界の言語の中で通訳できない言葉というのがあって、大阪弁の「なー」が第3位だったんです。1位と2位は、確か、アフリカとかの少数民族の言葉だったと思うんですけど。大阪弁の強さって、まさにそこにあると思うんですよ。他にも「アホか!」とか、東京の言葉に置き換えられそうで置き換えられない言葉がいっぱいある。そこで、もう勝てないんですよ。ある意味、漫才は、関西弁のための演芸といってもいい。落語には江戸落語と上方落語と、東西それぞれの文脈がありますが、「漫才=上方漫才」なんです。どうですか。勝ち目があるわけないでしょう。

──確かに上方漫才という言い方は聞きますが、「江戸漫才」「東京漫才」という言い方は聞いたことがありませんね……。その漫才は「しゃべくり漫才」と「コント漫才」に大きく分けられますが、M-1では王道とされる「しゃべくり漫才」が強い印象があります。しゃべくり漫才は、そう言われると、東京の言葉は向いてない気がしますね。

塙 漫才の母国語は関西弁ですから。日本語でオペラやミュージカルをやると、どこか不自然な感じがしてしまうのと同じことです。それと、M-1の審査員をしていた島田紳助さんに、昔、「ナイツの漫才は寄席の漫才だから勝つのは難しいよな」と言われたことがあります。持ち時間が、寄席は15分あるのに対し、M-1は4分しかない。中距離層と100メートル走くらい違いがあるんです。寄席に慣れ切ってしまった体でいきなりM-1に出たら、たぶんアキレス腱とか切っちゃいますよ。M-1は、もう完全に別物ですから。4分の場合は、勢いよくしゃべるしゃべくり漫才の方が笑いの回数も増えるので印象がいいんです。僕らが最終決戦に進んだ08年、他の2組は、オードリーとノンスタイルでした。そして勝ったのは、しゃべくり漫才のノンスタイルでした。でも彼らはスタイルというより、実力が抜けてましたね。

コント漫才は関東芸人が優勝する唯一の方法
──おっしゃるようにM-1は漫才という競技の中の「M-1」という種目のような気がしてきました。

塙 1500メートルを専門にしている選手が、大会の前だけ100メートルの練習をするよりも、常に100メートルの練習をしているやつの方が強い。僕らに足りなかったのは、そこじゃないかと思いますね。ただ、単に早くしゃべるだけなら、それは練習すればできるという話なので、そこにあんまりとらわれ過ぎない方がいいと思うんですけど。芸人にとって一番よくないのは、コンテストのことを意識し過ぎて、自分の持ち味を見失ってしまうことですから。コンテストはモチベーションの一つにはなりますが、そのためにやっているわけではない。僕は何組もの若手に「M-1は優勝を目指さないほうがいいよ」ってアドバイスをしたんです。心からそう思えるようになったとき、初めて自分らしさが出ますから。

──でも、関東芸人が活路を見出すとしたら、そのあたりにありそうですね。関東芸人には関東芸人にしかできない芸を目指すというか。

塙 関西って、160キロ投げるやつがゴロゴロいるような世界なんです。東京だと150キロぐらいでもすんげえ速く感じますけど、関西ではまったく通用しない。関西弁というフォームじゃないと、160キロは出ないんじゃないですかね。東京の言葉で、ばばばばばっていうしゃべくり漫才は本当に難しい。となると、変化球で勝負するしかない。

──だんだん、それらしい話になってきました。

塙 もちろん、例外もいますよ。M-1の歴史の中で、関西弁以外で160キロを投げたのは、アンタッチャブルと、サンドウィッチマンと、パンクブーブーの3組だけでしょうね。いずれも優勝してます。まあ、アンタッチャブルなんかは、バケモンみたいなコンビですから。それと3組に共通しているのは「コント漫才」なんですよ。「じゃあ、おまえコンビニの店員やって。俺が客やるから」みたいな形式の。コント漫才は、関東の芸人が優勝する唯一の方法だと思いますよ。コント漫才は漫才寄りというよりは、芝居寄りですから。しゃべくり漫才と違って言葉のハンディがだいぶ軽減されるので、剛速球を投げられる。というか、剛速球に見えるんですよね。初出場のとき旋風を巻き起こしたオードリーも、言ったらコントじゃないですか。役作りを徹底してますからね。芝居といえば芝居なんです。

──それと、関西と関東では、舞台を踏む数もぜんぜん違うのではないでしょうか。関西の人気漫才コンビになると、1日8公演とか9公演とかあるらしいですよ。

塙 東京だと多くても3か所くらいでしょうね。ただ、それが必ずしもいい方向に行くとも限らないと思ってるんですよ。というのも、吉本の劇場はツアーで地方から初めて吉本を観に来たというお客さんが多いので、新しいネタを試すというより、いつものネタをやって欲しいという空気になる。そこは大阪の唯一の弱点かもしれない。漫才はドラクエに似ているところがあって、やればやるほど経験値は上がっていく。たとえば、オール阪神・巨人師匠は、もうレベル99ですよ。僕らもレベル50ぐらいはいってるかもしれない。ただ、経験値が低くても戦う方法はある。強い武器を持つことです。ハライチとかもそうでしたよね。漫才自体はうまくないけど、「何だ、こいつら……」というインパクトがあった。あいつらの漫才には定石がないですから。その点、大阪の芸人は、強い武器を持つというより、同じネタを繰り返すことで経験値だけがどんどん上がっていく。だから、うまいなとは思うけど、すげえことやってんなとか思うことは少ないんです。発想でぶっ飛んだネタとかやるやつは、大阪にはあんまりいないんですよ。

関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?【第1回】 - 集英社新書プラス
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ぶっちゃけ過ぎてて草

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