【悲報】日本人、同調圧力によって終わる

イノベーションを阻害する「同調圧力」の呪縛

既存製品の延長線上にある新製品や新サービスの開発は次々と実現できるのに、まったく新しいコンセプトの製品を開発したり、既存製品を破壊するようなイノベーションを起こすことができないと悩む企業は多い。その企業に優秀な人材と多種多様な知識、経験が蓄積されているのにもかかわらず、である。

この答えとしてイノベーションのジレンマが有名だ。既存の市場と顧客のニーズへの対応に集中し過ぎることにより、新しいニーズを見失い、イノベーションができなくなることをいう。

しかし、新たな市場や顧客ニーズを見据えたイノベーションチームを社内につくっても、イノベーションを起こすのが難しいことの方が多い。それはなぜだろうか?

答えを先に言えば、その理由は「同調圧力」にあると考えている。イノベーションを起こそうとする人たちに対する、既存組織や周りの環境からの、変化させまいとする圧力である。

同調圧力は「場の空気」と言い換えることができる。「集団の一員であり仲間としての自分」という自覚を持ち行動すべきという暗黙の了解であり、行動規範のようなものだ。

こうした規範について、各人が意見を言うような直接的なことで「圧力」が顕在化するだけではなく、仲間にとってよかれと思って行動すること自体が空気となり圧力となる。その空気の中で、各人が規範から外れることを抑制するようになる。

一人前の技術者から異端児へ
私自身も同調圧力を経験した。私は社会人となり入社した会社で、写真フィルムの開発部隊に配属された。写真フィルムは「乳剤」と呼ばれる感光体を含む液体を塗布、乾燥して作られる。高度な技術に加えてノウハウの塊であった。

そのため、開発者が実験作業を遂行するには技術や知識だけではなく、“職人芸”も要求された。先輩職人の技術を早く習得しなければ実験ができない。私は入社してから、無我夢中で仕事を覚えた。

実はこの過程では、同調圧力はまったく感じなかった。私が「職人芸を覚えた技術者」として、仲間の信頼を勝ち取っていたからである。

状況が一変したのは、世界で初めての電子カメラの試作品がメディアで発表されてからだ。

私は、これは写真フィルムに取って代わる破壊的な技術だと直感した。それ以降、写真フィルムの将来について上司や同僚と話すようになった。

そのころから私は、仲間の行動規範から逸脱し始めたのだろう。上司からは、「余計なことは心配しないで業務に専念するように」と優しく諭され、同僚たちはデジタル写真についての議論に加わらなくなっていった。

しかし、彼らは声を荒らげるようなことは決してない。先輩も同僚も優しかった。ただ、私の話には反応せず、遠巻きに見ているような雰囲気なのである。私は、職人芸を覚えた技術者から、組織の存続意義に疑問を持つ異端児となってしまったわけだ。

私は、夜まで実験作業をこなしながら、深夜や週末に電子カメラの基礎技術を勉強する二重生活を続けるうちに、心身共に疲れ果ててしまった。

これが同調圧力だと分かったのは、社内で自ら立ち上げに参画した、電子映像技術の研究部隊に異動することができてからである。元の組織の共通規範が及ばない他の組織に移って、初めてその圧力を「見る」ことができたのである。

“起業家精神”は問題ではない
行動生態学・進化生物学者の長谷川眞理子氏と、社会心理学者の山岸俊男氏の共著、『きずなと思いやりが日本をダメにする』(集英社インターナショナル)に、興味深い内容があった。

人間の脳が進化したのは、気候変動により食料が豊富な森林が減り、人間がサバンナに出ていかざるを得なかったからだという。サバンナでは食料を探すのに知恵が必要になるし、他の動物から身を守るには、集団で協力した方が効果的だった。

しかし、集団で行動し、社会を形成するには、今までの動物にない知性が必要だった。それが集団内で上手に生きていくための知恵、「社会脳」だ。それは「同じ空間の中で他者と共存し、協力し合って生きていくための知性」であり、「具体的には集団内での衝突を回避するために他者の心の中を想像する能力が必要」だという。このようにして、人間は、集団生活で社会を形成するための知恵を身に付けていったと考えられる。

少子化などの社会問題も、個人の「心」が原因ではなく、環境により規定された社会や集団の中で、その人が最も生存しやすい条件を選択していることが原因だという。

社会脳の特性を考えると、同じ組織の中で、新しい規範の行動、例えばイノベーションを起こすことが、人間の本性として非常に難しいことが分かる。イノベーションが起こらない理由は、「起業家精神が足りない」などという、心の問題ではないのだ。

そう考えていくと、新たな市場や顧客ニーズを見据えた製品やサービスを生み出すなら、イノベーションチームという別の「集団」と、新しい規範による社会脳をつくる必要があるということだ。そうしないと、既存の組織の持つ同調圧力に押しつぶされてしまう。

既存の集団の社会脳は個人の心構えや頑張りでは変えられないのだから、規範や環境そのものを変えるしかない。具体的には、場所、人事制度、報酬を変えることが考えられる。外部から人材を投入、もしくは異業種のコミュニティーへ自ら入るのもよい。異業種の企業を買収するという手段もある。

人間がサバンナで生き抜いた時代は、集団から逸脱することは死を意味した。イノベーション活動を進めるために既存集団から逸脱した途端に、“キャリアの死”を覚悟しなければならない環境では、誰も新たな社会脳をつくることはできないだろう。

環境を変えられるのは経営トップだ。イノベーションの環境づくりはトップダウンでなくてはならないゆえんである。

イノベーションを阻害する「同調圧力」の呪縛
既存製品の延長線上にある新製品や新サービスの開発は次々と実現できるのに、まったく新しいコンセプトの製品を開発したり、既存製品を破壊するようなイノベーションを起こすことができないと悩む企業は多い。その企業に優秀な人材と多種多様な知識、経験が蓄積されているのにもかかわらず、である。

 

今の日本を完全否定しちゃう人たちって、これまで日本がどれだけのイノベーションを起こしてきたかきっと忘れちゃってるんだろうなぁ。

コメント