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天才プログラマーが予測する「AIが導く未来」 人間の「なんとなく」は合理的に判断される

   

天才プログラマーが予測する「AIが導く未来」

『週刊東洋経済』8月21日発売号「教養としてのテクノロジー」に連動したテクノロジー(テック)賢人へのインタビュー4回目は、AI(人工知能)ベンチャー・UEIの清水亮社長。清水氏は高校時代からコンピュータ雑誌でプログラミング関連の連載を持ち、大学在学中には米マイクロソフトの次世代ゲーム機の開発に携わったという“天才プログラマー”(独立行政法人情報処理推進機構が認定した公称)である。近年はAIの研究開発にのめり込んでいる清水氏に、AIをめぐるド素人な質問をぶつけてみた。

「機械学習」と「深層学習」の違い

――AIの発展は、マシンラーニング(機械学習)とディープラーニング(深層学習)という2つの技術によるそうですが、この2つの違いが正直よくわかりません。

マシンラーニングっていうのは、統計的に最適な答えを見つけるのが主な目的です。たとえるなら乗換案内やカーナビ。あれはどの経路が一番短いかという最適化問題です。でもディープラーニングにとって、最適化はあんまり意味がない。

――じゃあディープラーニングが得意なのは?

いちばんの特徴は、コンピュータがこれまで持てなかったセンスや感覚が生まれたということです。

センスとか感覚って、人間でも難しいじゃないですか。たとえば管理職が新入社員に「態度が悪い、失礼だぞ」「ビジネスマナーがなっとらん」といったことを注意して理解してもらうのは、非常に難しい。「どこが悪いんですか」みたいな反論をされると困っちゃうでしょう。「おまえのメールは一見丁寧だが慇懃無礼だぞ」と言うときの「何が慇懃無礼にあたるのか」という感覚は、ロジカルに言語化するのがすごく難しい。そのセンスがある人にはすごく簡単なのにね。

だから管理職が理性でもって注意したのが、「あの人は彼が嫌いなんだ」というふうに受け止められて、話がややこしくなる。世の管理職のストレスのほとんどがこの手の難しさに起因すると思いますよ。

ところがディープラーニングを使うと、何が「態度が悪い」ことなのかもコンピュータで判断できるようになるんです。態度が悪い人ってこんな感じだよね、というコンセンサスがデータとして取れる。つまり、「態度が悪い」という指摘が、ある種客観的な指標でもって示せるわけですよ。そうなると、「お前の態度が悪い、とAIが言っている」と言えるので、問題と人間関係を切り分けられる。AIに責任をなすりつけられるのです。素晴らしいですね。

注意されるほうも、「僕の態度のどこが悪いのですか」と聞き返したら、こいつ反抗してやがる、と誤解されがちでした。そういうのもなくなって、「AIが態度を悪いって言っているから、どう改善するか一緒に考えようか」となる。

――どうしてディープラーニングだと、センスが生まれるのですか?

理由は分かりません。それは「どうして人間には知性があるのですか」と聞くのと同じぐらい難しい。複雑系なんです。

――文脈が分かるってことですか。

文脈も分かるけれど、本質的にはそこじゃない。「なんとなく」が分かる、って言えばいいでしょうか。たとえばある生き物をみて、猫かもしれないし、犬かもしれない、さあどっち?という識別ができるのです。

「確たる答えはないけど、なんとなくこう」

――耳があってビゲが生えていてモフモフしている、というロジックじゃ犬と猫は識別できませんものね。

言い方を変えると、今までのコンピュータによる最適化の能力では、答えは基本的に1つしかない。それがディープラーニングだと、答えがそもそもないのです。「確たる答えはないけど、なんとなくこう」っていうのがディープラーニングです。

――アルファ碁がプロ棋士を破ったのも同じ仕組みですか。

そうです。アルファ碁も絶対勝てる手を打ったわけじゃない。「何となくここに打ったら勝てそう」っていうのをやっているわけです。

――「なんとなく」がわかるAIは、実際に社会ではどう役立ちますか。

いろいろあるんだけど、人事業務へのインパクトが大きいと思う。「この人はなんとなくパワハラしそう」「入社1カ月で辞めそう」というのがあらかじめ分かるから。

――採用する前でも分かっちゃう?

分かっちゃう。そうすると、多分採用がめちゃくちゃ楽になるはずです。

結局、就職してうまくいかないのは、マッチングの不全なんです。マッチングがちゃんとうまくできていれば、企業も転職者・就活生もお互いハッピーなはず。なのに、今はマッチングがうまくいっていなくて、企業と個人がお互いだまし合っている。「うちに来るとハッピーですよ」「私を選ぶといいですよ」というメッセージを伝えあっているのに、実際に採用してみたら全然ハッピーじゃなくて、就職して1年で辞めるなんてことが起こる。だって、思ったのと違うから。自分がやりたい仕事と違うから。

特に学生は、有名な会社を選びがちです。でもその根底にあるのは、「有名な会社に入りたい」ということじゃない。知らない会社に行くのが不安なのです。だから優秀な東大生が、大して有名でもないアルバイト先やインターン先にそのまま就職しちゃう、ということが起こるのです。

企業が全部、自動車会社や航空会社のように有名かつ仕事の中身もみんなが知っている、という状態ならわかりやすい。でもそうじゃないから電通とかリクルートのような、仕事の中身はよく理解されていないが、自社の存在をアピールするのがうまい企業に学生が集まる。メディアが伝えるいびつな情報によって就活の悲劇が起こるのです。

――そこにAIが入ると……。

「あなたに合っているのはこれこれという会社ですよ」というふうにAIが教えてくれれば、まったく知らない企業でも学生は「とりあえず受けてみようかな」と思うでしょう。さらに、「この会社にあなたが入社できる確率は80%で、5年後の年収はおそらく800万円」とまで示されたら、学生にとっては占い以上の判断材料になる。

すべてを明らかにすることで選択肢が見つかる

――そう考えると、結婚紹介所なんていうのもAIが活用できそうです。

できるでしょう。やり手の仲人おばさんが無理やり男女をくっつける、みたいな機能はさすがに難しいけれど、仲人おばさんが持っているセンスをディープラーニングが学習することはできる。

だからマッチングの精度を高めるために、人間が自分の情報をAIに包み隠さず見せる必要が出てくる。自分を偽らず、すべてをAIに明らかにすることではじめて、ぴったり合う選択肢が見つかるのだから。

――自分の全てをコンピュータに開示するほうがメリットがあるとなると、プライバシーの感覚が変わりそうです。

全然違ってくると思いますね。

――「フェイスブックにプライベートについて書くのは怖い」という人はいなくなる?

フェイスブックが気持ち悪いのは結局、出口が広告しかないからだと思います。これは広告のあり方が大きく変わっていかなきゃいけない。なぜなら、本来だったら人と商品をきちんとマッチングしなきゃいけないのに、実際には見せるべきでない人に見せちゃっている広告が山ほどありますから。アダルト広告を小学生に見せるのか、というわかりやすい問題から、どんなに頑張っても収入的に買えない人に高級車の広告を見せるのか、という問題まで。

それから、一度何かを検索すると、どのサイトを見てもその商品のターゲティング広告が出てくるのも何だかな、ですね。

――「その商品、持ってるっちゅうねん!」とツッコミたくなります。

そうそう。アドテクノロジーがまだ中途半端なんですよ。アドテクはおカネに直結しているから、1回ある方法が有効だとなると、それをみんながしつこくやるんですよ。テレビCMのGRP(グロス・レーティング・ポイント、延べ視聴率)が600だったらモノが売れるという通説もそうでしょう。

ここにAIを使ってもう少し賢くできれば、「買ったっちゅうの」という広告がなくせるだろうし、年収に合わせて見せることもできるでしょう。

――清水さんはテック(テクノロジー)に精通していますが、普通のサラリーマンがテックセンスを磨くにはどうしたらいいですか。

それはテックに飛び込むこと、浴びることです。浴びないやつは絶対に分からない。スマートフォン作って売ろうという人が、スマホを買ったり自分で選んだりしたことがなければ、スマホのことが分かるわけない。本を読まないやつが、面白い文章を書けるわけがないのと同じです。まあ、1回は書けるかもしれないですよ。文章が下手過ぎて珍しいとか、こんなに下手な文章を出版していいんだ、という驚きで売れるとか。でも1回だけです。

「ハードが手元にある人」が勝つ

――飛び込むというのは、ガジェットを買ってみるとか、使ってみるとか、そういうことですか。

それは大事。テックは結局、ハードが手元にある人間が勝つから。

僕は学生のころ、めちゃくちゃ高いグラフィック・ボードを買いました。買わないと分からないし、問題も指摘できない。そして誰も買ってないものを買うほうが強い。エプソンのロカティオっていうPDA(携帯情報端末)がありました。多分、世界で初めてGPSを内蔵したPDAで、地図を閲覧できたり、記録できたりしました。周りの誰も買っていないんですが、僕は買った。そうすると、地図を使ったインターネットサービスがどういうものなのか、どんなインターフェースがいいのかってことが誰よりも早く想像できるようになる。

ソフトの差って何かというと、人間のイマジネーションの差でしょう。でもイマジネーションの差って、思っているほど大きくない。

――イマジネーションとソフトで差別化する、という考え方が一般的ですよね。

それは、そう言っておかないと自分の仕事がなくなっちゃう人がたくさんいるからです。でも、ライゾマティクス(メディアアートの集団。ブラジル・リオ五輪の閉会式で、プロジェクションマッピングを使った東京五輪のプレゼンテーションを演出した)がもしプロジェクションを使わなかったら、と考えてみてくださいよ。平凡な映像プロダクションでしかないでしょう。プロジェクターなり何なり、飛び道具があるからライゾマは初めて価値を発揮できるんです。

イマジネーションだけでやろうとすると、ディスプレイから出られない。ディスプレイの中からリアルに飛び出すためには、ハードがないといけない。アラン・ケイ(米国のコンピュータ科学者兼教育者、パソコン開発に大きな影響を及ぼした人物)が言ったように、ソフトについて真剣に考える人は、ハードを作らないといけない。ハードありきでモノを考えたほうが、うまく見極められる。そして一番手っ取り早いのは、ろくでもないハードを買うことです。

――みんなが買わないようなモノを買う。

マイクロソフトのHololens(ホロレンズ)を買って、それがいいって言っている人はほとんどいない。だからこそ、それを手にすればキラーアイテムになる。値段は30万円もするし、明らかに今は何の役にも立たないんですけど、あれを使ってみることでチート(ずる)になって特別扱いされる。落合陽一君なんか、ホロレンズをかけて外出している。恥ずかしいし格好悪いから普通はやらない、そういうことをやるのが意味がある。

――シャープのロボホンとソフトバンクのペッパーはどうですか?

僕はどちらも買っていない。理由は同じで、どちらも面白いけど、僕向きじゃなかった。ペッパーを買って何をするか、まったくイメージが湧かなかった。手元にあったとして、はて、何をさせるか?というイメージの湧かなさを考えると、100万円以上(注・本体とサービス料などを合わせたトータルコスト)という値段は釣り合わない。あ、中古のペッパーってあるのかな?安いのかな。

――安ければ買う?

10万円ぐらいだったら買うよ!

――調べましょう!

(インターネットでしばし調べる)……あった。70万円だって。

――ちょっと高いですね。

でも、70万円だったら買える。買うか? いや、やっぱりいらないよな(笑)。

http://toyokeizai.net/articles/-/185678

なかなか面白い良記事。AI興味ある人は読むべし

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